マスクの洗濯による性能低下について(その1「不織布マスク」)

らくなマスク

このシリーズでは、マスクを洗濯することによる性能低下を見ていきたい。

特に、「飛沫防止」に影響の大きい「撥水性」の変化に着目し、試験および考察を行う。

飛沫防止効果に関して述べると、その優先順位は
1)マスク素材の通気性の低さ
2)マスク素材の撥水性の強さ
3)マスク素材の飛沫キャッチ効果(各種フィルターの帯電効果その他を含む)
となる。会話程度のゆっくりとした気流のスピードだと、フィルターが機能する。しかし、「クシャミ」や「咳」という会話の何倍から10数倍の風速風圧に対しては、通常のフィルター機能は追いつかない。
極論から言えば、マスクが通気性の無い素材例えばビニールだと、100%飛沫を通さない。
次に同じ通気性の素材があった場合、帯電効果とか分子力とかいう弱い力ではなく、「高速で突き抜けようとする、多くの水分に囲まれた飛沫」を弾くのは「撥水性の強い素材」なのである。

よって、今回はこの「撥水性」をチェックしていく。
最初の題材が「不織布マスク」である。不織布マスクは使い捨てが前提だが、洗って再利用も出来る。ただし多くのメーカーはそれを推奨していない。

マスク不足の時に、「不織布マスクを洗ってみた」というレポートが幾つかあり、また「洗うとフィルターの帯電効果(これがホコリやウィルスを集めていると説明されている)が落ちる」とも書いてある。(例えばこちら→https://www.olive-hitomawashi.com/living/2020/12/post-3547.html)

しかし、現実問題としてクシャミなどの飛沫は帯電効果では防げない。クシャミの風圧風速に帯電効果が追いつかないからである。不織布の飛沫防止における最大の要因は「撥水性」である。

この撥水性が洗濯する事により落ちて行くと、自ずと飛沫防止能力も落ちていく。

今回は、このことを実験で確認した。


まず、不織布マスクを分解してみると、表、中間層、裏の3枚から出来ている事が解る。
表と裏は比較的薄い不織布。いろいろな説明が各社でなされているがここでは割愛する。
肝心なのが中間層。メルトブロー製法で出来ている不織布マスクの要めである。これが微粒子を補足するというのがマスクの機能だとされている。

今回はこの3層について洗濯後の撥水性を調べてみた。

(撥水度は5段階評価。「JIS L 1092 7.2 はっ水度試験(スプレー試験)」に準拠して行った。2~5が撥水性あり。)

洗濯回数 中間層
0 4 4 4
1 1 3 1
2 1 2 1
3 1 2~1 1
4 1 1 1
5 1 1 1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

洗濯前は、どの層も撥水性能は高かった。これが不織布マスクが「飛沫防止に効果がある」と言われる理由だ。
しかし、薄い表地と裏地は1回の洗濯で撥水性が無くなる。
さらに、肝心のメルトブロー中間層も、洗濯毎に撥水性能が落ちていき、ほぼ4回でほとんど撥水性が無くなる。つまり不織布マスクを洗えば洗うほど飛沫防止効果は落ちるという事だ。

中間層の洗濯後の撥水の状態を見てみよう。

何故洗濯すると不織布の撥水性が低下するかは私は不織布の専門家ではないのでわからないが、結果については簡単な実験で確認できた。

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